Almac Sciences社の導入事例 | 製薬・医療機器業界向け品質管理システム(QMS)・製造実行システム(MES)
導入事例
Almac Sciences
  • 医薬品製造
  • MES
電子バッチ記録で受託製造を加速化させたAlmac Sciences
Almac Sciences社は、化学品の開発から高度な中間体および原薬(API)の商業規模の製造まで、一貫したサービスを提供する医薬品開発・製造受託機関(CDMO)です。同社は、人々の健康増進に取り組むクライアントに対して質の高いサービスや専門的な見解、経験、深い知識を提供する企業として評価されています。
企業概要
主力事業
医薬品開発の受託、高度な中間体
および原薬(API)の臨床試験供給
設立
2001年
本社
英国、北アイルランド、クレイガボン
ソリューション
Manufacturing Excellence (Mx)
課題
Almac Sciences社は、高い品質基準を維持しながら高度な製品仕様を扱うことができるCDMOとして、すでに高い評判を確立していました。しかし、同社の広範な紙ベースのプロセスが障壁となり、個別化医療やがんワクチンに使用するペプチドの新興市場の特徴として求められる、ハイペースでの生産需要を満たすことができませんでした。同社は、製造プロセスを簡素化および加速化し、複雑で高度に個別化された製品を記録的なスピードで生産することを叶える医薬品CMO向けソフトウェア/CDMO向けソフトウェアソリューションを必要としていました。
ソリューション
Mx
成果
Manufacturing Excellenceを導入して以来、Almac Sciences社の生産サイクルは数か月から数日へと短縮されました。同社は、個別化医療を対象とした高品質なペプチド複合体を提供する大手メーカーとして成功を収めつつあり、医療の新たな境地を切り拓いています。頻繁な検査に迅速に合格し、仕様どおりの治療法を提供するだけでなく、厳しいGMP品質基準を遵守することで、クライアントからの高い評価を獲得しました。マスターコントロールの革新的なソリューションは、同社が独自のイノベーションを生み出すことに貢献しました。当社のソリューションを取り入れることによって、Almac Sciencesは、サービスを提供している個々人の生活に影響を与えられるだけでなく、より大きな市場への影響を検討できるようになり、人々の健康増進を図るという包括的な目標へと一歩近づくことができました。

柔軟な製造ソリューションで個別化医療のGMP基準に準拠する方法

Almac Sciences社は、医薬品開発プロジェクト全体にわたって重要なサービスを提供することで、世界をリードする数々のバイオ医薬品企業から信頼されています。過去5年間だけでも、同社は米国食品医薬品局(FDA)が承認した新規化学物質(NME)全体の約50%に貢献しています。現在、欧州連合(EU)が承認/事前登録した遺伝子治療製品の30%をサポートしています。

Almac Sciences社は、以下のサービスを提供することでよく知られています。

  • 研究および開発(R&D)
  • 診断サービス
  • 原薬(API)製造
  • 剤形開発
  • 臨床試験供給サービス
  • 商業規模の製造および流通

同社の専門分野の1つが、個別化がんワクチンで使用するハイスループットペプチドの製造です。この最先端のサービスを提供するため、スコットランドのエジンバラに、この製品に求められる適正製造基準(GMP)の厳しい要件を満たす目的で施設を立ち上げました。同社は治療薬開発の最前線を走り続けながら、受託製造機関として信頼を集めるトップ企業でいられるような態勢を整えています。

Almac Sciences社は、民間組織であるAlmacグループの傘下にあります。同社は過去50年間で精力的に収益を拡大し、ヨーロッパ、北米、アジアの18の施設で6,500名以上の高度なスキルを有する従業員を雇用しています。

「製品をより効果的かつより迅速に製造するために、可能な限りあらゆる手段を検討したいですよね。当社の場合、従来の製品で通常期待されるよりも約80~100倍のスピードアップを目指しました。...デジタル化はその目標に向かうための大きな一歩です。」
Alastair Hay氏 Almac Sciencesペプチド担当バイスプレジデント

複雑な治療薬開発で見出した新たなアプローチ

Almac Sciences社は、従来型の医薬品業界に焦点を当てたCDMOとして始動し、臨床開発に長い年月を要する大手製薬会社に対して、市販前のサービスを提供してきました。しかし、ここ10年間で臨床試験における高度な治療法が爆発的に増加するのに伴い、Almac Sciences社は、市場の新規セグメントにサービスを提供する商機を見出しました。

過去10~15年間に、独特の化学的性質を有するペプチド分子への関心が高まっています。ペプチドは中分子であり、従来の低分子医薬品と高分子の生体タンパク質の中間あたりに相当します。ペプチドは特定の疾患タイプをターゲットとする場合に効果的であるため、個別化医薬品やがんワクチンでの使用に非常に適しています。従来のペプチド治療薬は、開発と製造に何か月もかかります。しかし、個別化医療の場合の要件は異なり、複数の製品をほんの数日で製造する必要があります。

Almac Sciences社のペプチド担当バイスプレジデントであるAlastair Hay氏によると、こうした最先端の治療法の登場により、製造を取り巻く環境はこの4~5年間で大きく様変わりしたそうです。

「技術面と規制面の課題が複雑に絡み合っていると思います」とHay氏は述べています。「治療薬の開発を試みる疾患タイプとその複雑さの観点から言って、状況は大きく変化しています。治験依頼者や発明者はこれまで以上に複雑な分子を作成しており、様々な製造上の課題を克服し、難易度の高い目標を達成するための新しいアプローチを考案することが求められています。」

記録的なスピードで個別化医療の競争に打ち勝つ

Almac Sciences社は、個別化医療の新規市場に参入する機会を見計らっていたため、従来の紙ベースの製造プロセスが足枷となり、製造処理能力を高めることができませんでした。

これまでは、生産バッチを完了するまでの製造プロセスにおいて、数百ページもの紙の文書を処理しなければなりませんでした。アクティビティごとにオペレーターが手動で記録を行い、日付を記入し、署名する必要がありました。生産工程へと移行する上で必要な情報を誤入力する、内容を判読できない、記録されないなどのリスクが発生しやすい状況です。関連する手順は必然的に連続しているため、長い生産サイクルでこのような事態が起こることは、個別化されたペプチド生産の現場では許容されません。

この治療薬の開発プロセスは複雑であるため、すぐに実行できるシンプルなソリューションを選択する必要がありました。

「製品という観点から、設定が簡単で使い勝手が良く、品質に一貫性があり、当社の求める機能を備えたソリューションを探していました」とHay氏は述べています。

そこでAlmac Sciences社は、最新の製造実行システム(MES)ソフトウェアソリューションであるMasterControl Manufacturing Excellenceを選びました。Almac Sciences社の製造スーパーバイザーであるLaura Glenn氏によると、このソリューションのデジタルプロダクションレコードによりヒューマンエラーが減少し、バッチレビュー時間を短縮でき、劇的な変化がもたらされました。

「場所を問わず、一日のうちいつでも作業を行えるため、バッチレコードのレビューを行う時間が短縮されました」とGlenn氏は述べています。「紙の書類を全部集めてすべてに目を通す必要はありません。一度に10個ものタブを開くことができ、作業がはるかに簡略化されました。」

Almac Sciences社には通常、生産バッチごとに約80件の個別の製造指示書(MD)が存在するため、この変化は非常に重要なものです。

Almac Sciences社の品質マネージャーであるMartin Ross氏は、この製造プロセスの改善に関与しています。

「電子システムを採用するまでは、紙ベースのシステムにより制約を受けていることはなかなか実感できません。ところがこのシステムを取り入れるだけで、コンプライアンスと有効性を向上できるだけでなく、時間とリソースを節約できる新しい働き方や新しい商機を見出せるのです」とRoss氏は述べています。

「当社の業務遂行には、徹底的な記録が必要です。...マスターコントロールを使用して紙の記録を排除したことにより、効率性が高まりました。これで、私たちは同時並行かつ迅速に作業を実施できるようになりました。」
Alan Manderson氏 Almac Sciencesシニア製造化学者

規制パートナーとの緊密な連携

Almac Sciences社の分析試験所は、英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)や米国食品医薬品局(FDA)などの適切な規制当局によって完全に認定されています。医薬品開発の最前線で業務を遂行し、各製品の独自性を確保するには、規制当局との一貫したコミュニケーションを継続する必要があります。Almac Sciences社は、高品質の基準を維持しながら、多品種少量生産を採用できる柔軟なソリューションを求めていました。同社はまた、高度なスループット要件を念頭に置きつつ、商業化を見越した将来的なスケーラビリティを確保しておく必要もありました。

「技術的側面は常に進化し続ける課題です。未開拓分野を切り開いて新たな製品を開発する場合、必ずしも規制上の前例があるとは限りません。ですから、規制パートナーと緊密に連携して、すべての作業において患者の安全を最優先に維持できる体制を構築していく必要があります」とHay氏は述べています。

監査における成功

毎年、Almac Sciences社は、規制当局やクライアントを含む様々な事業体による多数の監査を受けています。規制当局の観点から見ると、デジタル化により同社の準備態勢は常に整っており、必要な文書に容易にアクセスできることから多大なメリットがもたらされました。同社の監査は通常、非常に短い時間で完了します。

「クライアントと規制当局の両方から監査を受ける場合、MasterControl社を監査室のスクリーンに立ち上げておきます。要請に応じてすぐに文書を表示できるので、監査側からも喜んでもらえます」とRoss氏は監査時の成功体験について語りました。「記録を見つけるまでにもたつくことはありません。その場で瞬時に対応できます。このような管理レベルを披露できることは、監査において大いに有効です。」

仕様および品質基準が満たされていることが見て取れるため、クライアントからの信頼感が高まります。

「当社の製品提供プロセスには、完全な品質システムが組み込まれています。このシステムにより、当社の品質基準を高く維持し、さらに迅速な製品提供が実現できるのです。」
Laura Glenn氏 Almac Sciences製造スーパーバイザー

競争上の優位性に転じる品質

Almac Sciences社は、同業界内の他の受託製造業者やペプチドをターゲットとするメーカーの中で、厳格にGMPに遵守することによって差別化を図っています。Manufacturing Excellenceを使用すると、製造化学者とマネージャーはプロダクションレコードから直接品質フォームを起動でき、インライン品質保証とリアルタイムの品質管理が可能になります。

Almac Sciences社では、製品の品質は患者の安全により推進されるものであると考えています。同社はこの点を、事業を行うための前提条件として非常に重要視しています。顧客はより安い他のメーカーを選ぶかもしれませんが、安さを優先させると最終的に製品の品質が犠牲になるでしょう。重要なのは、適切な手段で、安全に製造することなのです。

製造スーパーバイザーのLaura Glenn氏も、このように品質に焦点を当てることを重要視しています。

「ペプチド製品を製造している企業は他にもたくさんありますが、当社はGMP基準に適合するよう製造しています」とGlenn氏は述べています。「そのため、当社の製品提供プロセスには、完全な品質システムが組み込まれています。このシステムにより高い品質基準を維持し、迅速な対応が可能になります。」

Almac Sciencesチームが働いているような重要な製造環境には、人命がかかっています。たとえば、製造化学者のSarah Sinton氏をはじめとする一部の従業員は、この意識を持つことで自身の業務により熱心に打ち込めるようになりました。

「これは重要な業務だと考えています」とSinton氏は述べています。「私たちが治療薬の開発に向けて少しずつ前進し、改善し、プロセスの迅速化に努めれば、患者様に治療薬をより早くお届けできるのです。この点を心に留めておくと、日々取り組む開発業務にも自ずと力が入ります。」

「当社はより良い仕事をより素早く行い、プロジェクトをより迅速に提供しようと常に試みています。少しでも早く患者様に届けられることで、この種の治療法がより広く使用される可能性が開かれるからです。」
Sarah Sinton氏 Almac Sciences製造化学者

個別化製品のための柔軟な製造ソリューション

Manufacturing Excellenceを導入する以前、Almac Sciences社のプロセスでは、品質担当者が事前に必要なフォームに繰り返し手入力する必要がありました。現在では、オペレーターが選択できる電子化されたテンプレートを活用して、品質マネージャーが指示を事前承認しています。これまで同社は、生産サイクルの最後で、品質担当者に全バッチレコードのリリースを一任するしかありませんでした。現在では、製造スーパーバイザーが完成した製造指示を直接リリースできるようになりました。こうした共同作業の改善により、品質担当者にかかる作業負荷が軽減され、製造担当者は業務の完了に求められていた記録の作業から解放されました。

Sinton氏によると、Manufacturing Excellenceを利用する主な利点の1つは、複数の人が同じバッチレコードを同時に使用できる点だと言います。ある従業員が初期のプロセスに取り組んでおり、別の従業員が同じ製造指示書内で詳述される後期のプロセスに着手できないことが多かったため、バッチレコードの同時使用はAlmac Sciences社に大きなメリットをもたらしました。

マスターコントロールを使用すると、「2人の従業員間で紙の書類を交換することなく、同時に同じ作業を行うことができます」とSinton氏は述べています。

このような新たな電子化がもたらした柔軟性は、Almac Sciences社がマスターコントロールの製造ソフトウェアを使用して享受できるようになったもう1つの利点でしょう。これにより、重要な製造タスクと品質タスクをタイムリーかつ柔軟に割り当てて完了でき、どこにいても同時に作業を進行でき、クラウドを介して時間を問わずリモート対応できるようになったため、同社独自のプロセスの創造的な最適化が促進されました。さらに、電子レコードにより手動の文字起こしが不要になり、プロダクションレコードのエラーを回避できます。これらの改善が組み合わさって、バッチリリース時間の短縮と効果的な製品の迅速な開発に直結するのです。

「6か月以内に生産量を2倍にすることを目指しています。通常、この目標の実現には2倍の事務作業が必要ですが、現在はそうではありません。マスターコントロールを組み込んでいるため、簡単な移行を実現できるでしょう。」
Martin Ross氏 Almac Sciences品質マネージャー

スケーラビリティと将来の商業的成長を支える基盤

Almac Sciences社は製品の商業化を見据えているため、承認前の検査の頻度が上がっています。最先端の医学をサポートできる最新のMESソリューションの登場により、将来のある時点で、すべての治療を個別化する可能性を考慮できるようになりました。

「新しい世界を創造できる余地があり、それが柔軟な考え方を生み出すのです」とHay氏は述べています。「市場が求めているものを確実に提供できるように、技術上の観点と製造上の観点のみならず、規制上の観点からも、既成概念にとらわれることなく十分に考え尽くす必要があります。」

近い将来には、施設の製造オペレーションを今後3か月以内に現在の2倍の規模に拡大していく予定です。Almac Sciences社は、MasterControl Manufacturing Excellenceを活用してこの計画を実現できると確信しています。

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