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FDA査察における指摘事項への対応 ~反論もOK!?~|ニュース&コラム|品質マネジメントシステム(QMS)管理ソフトウェアならマスターコントロール

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FDA査察における指摘事項への対応 ~反論もOK!?~

2017-05-02


法制化策定及びFDAの査察官としての22年
FDAは限定された人材での運用に追われながらも、法規制対象にある企業への査察は継続しており、査察報告書(Form 483)や警告文書が発行されています。

2014年の1年間を通じて実施されたFDAの査察件数は38,000件を超え、発行された8,457件のForm 483には、査察官の判断で業務や製品がFDA要求事項に適合していないことを示す指摘事項が記載されています。

経験を積んだ査察官の世代交代の中、この年間査察件数を維持するため、FDAでは新たな査察官の雇用にも取り組んでいます。もちろんベテランの査察官も残留していますが、経験の浅い査察官が担当することになる可能性も高いのです。

業界特有の知識が不十分な新米査察官が、馴染みのない製品やプロセスに関する説明を理解し受け入れるということは難しいことかもしれません。ですから、もしForm 483の所見に納得できない場合には、議論を大きくしすぎないためにも、効果的かつ責任のある回答手段を認識し講じるべきだと考えます。

査察終了後のプロセスの一例
Form 483への回答は、規制当局の上層部(ワシントンの法執行部を含む)が関与する前に企業側のストーリーを伝えることのできる最高のチャンスです。

驚く企業の方もいるかもしれませんが、Form 483の記載内容で企業が適切ではないと考える点については、査察官が企業を去ってしまう前に、企業側の責任で査察官に働きかける、あるいは少なくとも意見を伝えることが求められています。

査察後の最終確認会議では、査察官がForm 483の指摘事項をひとつずつ説明し、企業の回答や査察期間中に実施された是正措置を記録する義務があります。

指摘事項に対して100%の自信をもって回答できるのであれば、たとえ反論であっても回答すべきでしょう。しかし、どのように回答すべきか浮かばない場合は、指摘への回答は書面にてFDAに送付する旨を査察官に伝えるほうが得策です。

口頭で回答したとしても、フォローアップとして書面での回答を迅速にFDAに提出することが極めて重要となります。理由は次のとおりです。

企業に出向き、査察が終了してから10営業日以内に指摘事項を要約した、施設査察報告書(EIA:Establishment Inspection Report)をスーパーバイザーに提出することが、FDA査察官には義務付けられています。FDAでは警告文書を発行するのか、あるいはその他の法的措置を講じるのかについては、EIRの提出を受けたときから動き始めることになっています。

FDAからは15日以内にForm 483の指摘事項への回答を提出するよう求められますが、私は査察官が査察報告書を最終化するまでのスケジュールに合わせて、10日以内の回答提出をお勧めします。早めに回答を行うことで、FDAの上層部に企業側の意見が伝わるチャンスは最大限に広がります

そうすれば、企業からの回答は、Form 483に記載される指摘事項に対し警告文書の発行が必要か否かの判断を下す査察官のスーパーバイザー(通常は地域コンプライアンス担当者)やその他の法執行機関の当局者を含む全ての関係者の目に触れることになるのです。

回答が適切であると判断されれば、企業から提案された是正措置が認められ警告文書の発行に至らずに済んだことを示す文書を受領します。しかし、これで終わったわけではありません。もし、再査察の際に、是正措置が実施されていなかった、または効果がなかったことが判明すれば、初回の査察で警告文書の発行がされていたものと同様に再査察が行われることになります。

次に回答、特に書面による回答に含むべき内容をご紹介します。

・査察官からの指摘事項の再記載-これは企業が問題を理解していることを示すことが目的です。
・指摘を受けた理由について
・製品仕様への影響はなかったこと(あるいは、今後影響しないこと)を確認するために講じられた措置について
・指摘事項に対する取り組みの開始日とその方法について

企業の事業内容に精通していないFDA担当者が回答を読みますので、事業内容や製品、業務概要、企業の歴史などを盛り込むと良いでしょう。

指摘事項に同意しないのであれば、問題の背景となる情報を提示し、査察官からの指摘を受けた理由と、その指摘が妥当ではないとする根拠を説明してください。

的確な科学的根拠を準備しましょう。ご自身のプロセスや製品に伴う経験を討議すべきであって、査察官の経験や査察プロセスを侮辱するようなことはしてはいけません。そのような方法では当局との友好的な関係を築くことはできないでしょう。

書面または口頭で回答する場合、指摘を受けた状況に対し、基準を満たす製品であることを保障するために合理的かつ最大限の取り組みを企業の管理下で実施しているということをFDAに示すことが非常に重要となります。

次に、回答として不適切な内容を挙げます。

  • ・規制の解釈を争点にしないこと。たとえ経験の浅い査察官であっても、規制に関しては企業の皆さんが知っていることよりもっと細かなところまで査察官は熟知しているのですからFDA査察官に分があります。規制の解釈を当局と議論したところで、まず勝ち目はありません。
    ・予定される是正措置の概要の記載がなく、単にForm 483を受領した旨だけの記載で済ませないこと。是正措置が示されていない場合、企業は問題を理解していない、またはその重要性が認識できていないと当局は判断します。


効果的な回答事例
ここで、実際にあった査察における指摘事項3例と、それに対する企業からの不適切な回答とそれに対する適切な回答例とをご紹介します。私が考えるより慎重で効果的な回答例もありますので、是非比較してご覧ください。

指摘事項 事例1:保管用冷蔵庫に記録表はないが、製品は保管条件の摂氏4~8°で保管されていた。

不適切回答例:冷蔵庫に記録表を設置する予定です。

適切な回答例:保管条件による製品への影響はないことを確認するために、実施済みの全試験を再度行い、冷蔵庫に保管された全製品の再調査を行う予定です。合格品質限界(Acceptable Quality Limited :AQL2.5)を用い、統計学的に裏付けされた抜き取り検査計画書に基づき、抜き取り検査を実施する予定です。不合格品が確認された場合、全ロットを破棄するか、可能であれば再加工することになっています。試験終了後、試験に関する文書の写しを2週間以内に提出する予定です。記録表は、30日以内に全ての冷蔵庫に設置する予定です。

指摘事項 事例2:冷凍乾燥器の取扱説明書では、機器のメンテナンスは6か月ごとに実施することとなっているが、現時点で冷凍乾燥器の定期メンテナンスは実施されていない。

不適切な回答:早急に冷凍乾燥器の製造元に連絡し、保守契約をお願いします。

適切な回答例:冷凍乾燥機には故障ベースの保守スケジュールが立てられています。20年間使用していますが、本冷凍乾燥機で冷凍乾燥された製品に問題があったことはありません。予防的にメンテナンスを行って冷凍乾燥機が正常に稼働しているか確認する必要はないと判断します。

指摘事項 事例3:電気的試験で記録された結果は定性的データのみで、定量的データはなかった。

不適切な回答:これらの試験の場合、社内標準作業手順書(SOP)では定量的データを記録することは要求されていませんので、FDA Form 483で扱われる問題ではないと考えます。

適切な回答例:査察官が必要と判断された定量的データは、実際、電導度の判断にのみに使用したものです。プロセス評価が実施されており、一定の傾向を示すと判断できるような情報を定量的データの記録から得ることはできません。このような試験では製品の仕様が満たされていることを担保するために定量的データは必要ないという理由を査察官がご存じではなかったので、こうした情報を査察官に説明しました。

「適切な回答」では具体的かつ積極的な姿勢が示されている点にご注目ください。また企業がどのように問題を理解し管理していることについても明確になっている点がお分かりいただけると思います。議論や意見を投げかけるのではなく、事実のみを提示しているのです。

無回答のままにしておくのは賢い選択ではありません。
Form 483による査察指摘事項を受けた場合に最大の目標となることは、企業の経済的、法的損失の可能性を最小限にとどめることとなりますので、可能な限り迅速に指摘事項への対応に取り組まなければなりません。

Form 483に回答しなければならないという法的拘束はありません。しかし、Form 483の段階ではあくまでも指摘事項が査察官の意見であることを覚えておいてください。ですから、タイムリーかつ周到な回答することは、当局で追加的措置が検討される前に企業側のストーリーを伝えることができる最良で、おそらく最後のチャンスとなるでしょう。

ご存知のとおり、絶妙なバランスが存在します。自ら問題を取り上げる必要がありますが、もし、企業が当局やその職員を侮辱するような態度を示すようなことがあれば、より高額な費用がかかってしまうことになったり、悪い評判がたって経営が立ち行かなくなってしまうような追加的な法的措置を通じて、コンプライアンスの問題に直面することになるかもしれません。

こうした態度をとるのではなく、これ以上の法的措置の必要性はなく、企業は当局が指摘する問題を認識し解決に向けて取り組んでいることをFDAに示してください。そうすれば、当局はあなたの組織の進捗状況の監視を継続しながら、「より大きな問題」を抱える企業へと注目対象を移していくかもしれません。
確かなことは、Form 483の査察指摘事項への無回答、回答遅延や不十分な内容が、御社CEOのデスクに警告文書が届けられてしまう可能性を高めてしまうということです。

企業の回答に関するその他の情報:
Form 483や警告文書の発行に関するFDAのアプローチに関する詳しい情報を知りたい方は、次にご紹介するリンクにアクセスしてください。


FDAは査察の完全「戦略法」を納めた本を作成しています。「Investigations Operations Manual (IOM)」はfield investigator向けポリシーガイドで毎年更新されています。2015 年度版IOM のPDFファイルがEduQuest社から発行されており、ウェブサイトから無料でダウンロードできます。

著者のご紹介
Martin Browning 
FDAに22年間、エキスパートField Investigatorとして、またFDAの薬事部門アソシエイトコミッショナーのスペシャルアシスタントとして従事。21 CFR Part 11規制を起草したメンバーの一員でもあり、品質システムに関する規制(21 CFR Part 820)の作成にも貢献。1995年にEduQuest社を共同で立ち上げ、FDAコンプライアンスエクスパートのグローバルメンバーの一員としてFDA模擬査察や薬事的アドバイス、FDAコンプライアンス関連のトレーニングプログラムを提供している。

本投稿に関するご質問は、EduQuest社Martin Heavner (martinheavner@eduquest.net, 301-874-6031)までご連絡ください。

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

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