MASTERCONTROL NEWS
コラム
2019-03-12
ラベリングアートワークのドキュメントには、手作業による校正をしている人には見えない、隠されたリスクがあることをご存じですか?
もちろん、誰かが故意にリスクを発生させているわけではありません。
ライフサイエンス企業の社内または外部委託業者に所属するグラフィックデザイナーは、業界特有の課題を抱えているのです。 優れたビジュアルを作成するだけではなく、事業を取り巻く規制環境を深く理解しているかを求められているのです。
グラフィックデザイナーが全員、常に規制上のベストプラクティスをすべて順守できると想定することは、決して現実的ではありません。その為、そこに隠されたリスクをみつける方法、そして将来的にそうしたリスクを回避する方法を理解することが重要となります。
目に見えないものから害を受ける可能性
・ ラベリングアートワークに隠された最も一般的なリスクとは何か
・ どのようにリスクが発生するのか、またその理由とは何か
・ リスクに対するドキュメントの確認方法
・ 将来的なリスクの発生防止に貢献するベストプラクティスとは何か
グラフィックデザイナーは、Adobe IllustratorやAdobe InDesign等のデザイン向けソフトウェアを使用して、ラベリングのアートワークを作成します。これらのソフトウェアは高額かつ複雑であるため、社内レビューの際にはPDFなどの一般的なフォーマットに変換し、デザインプルーフが承認された後、印刷業者への依頼を行います。。
アートワークのデザインプルーフとしてPDFがよく使用されていますが、所定のアプリケーションからPDFにエクスポートする際、推奨の方法が用いられていないケースなどで問題が発生する場合があります。
ここで、ベストプラクティスに従わない場合に生じる問題の例をご紹介します。
・ 文字化け:画面や印刷物上の表示では正常に表示されていても、テキストに使用されたUnicodeのコード値(多くのソフトウェアで読み取り可能な文字を定義したユニークなコード)が取り除かれてしまうことがあります。Unicodeは、テキストを音声に変換するアプリケーションで使用されている為、文字化けが発生した場合、アクセシビリティに問題が生じる可能性があり、ドキュメントを読み上げるアプリケーションを使用することができなくなる可能性があります。
・ 環境にないフォント:推奨されるPDFへの変換方法を使用している場合、ドキュメントで使用されている全てのフォントはファイル内に埋め込まれる為、常に正しい形式で表示されます。しかし、フォントが埋め込まれていない場合、テキストが異なるフォントで表示されたり、判読できない "ゴミ"として表示されたりする可能性があります。このような問題が発生してしまった場合、追加の修正作業や再印刷などが必要となるケースが出てきます。
PDF変換の問題を確認する方法
文字化けは、デザインプルーフ内のテキストをメモ帳などのテキストエディターにコピーすることで確認が可能で、コピーしたテキストが正しく表示されていれば、文字化けが発生することはありません。また、テキストを読み上げるソフトを使用して、実際に読み取らせることでも確認が可能です。
また、埋め込みフォントの確認は、Adobe Acrobat(またはAcrobat Reader)を使用することで可能となります。ファイル/プロパティに移動し、フォントタというブから埋め込まれたフォントを確認することができます。
PDF変換の問題を回避する方法
PDF変換におけるベストプラクティスを理解し、それを守らなかった場合に発生する問題について認識する必要があります。また、推奨されるPDFへの変換方法は、各デザインソフトウェアにて決められており、この方法を守るようにしましょう。
また、 印刷業者に発注する前にPDFのプリフライトチェックを行うことも有効です。プリフライトチェックは、PDFファイルに対して複数のチェックを実施し、印刷への準備が整っているかを確認します。多くのデザインソフトには、プリフライトチェック機能が搭載されていますが、サードパーティー製品を利用することも可能です。
本記事は連載企画の前編です。後編をご覧になりたい方は、こちらをクリックしてください。