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リスクマネジメントとヒト【前編】

2019-03-25

私たちは自らを知能の高い、スマートな種だと認識しています。スマートな判断が可能な、スマートフォンにスマートカーといった「スマート」という名称が付けられた様々な製品を所有しています。

では、実際はどうでしょうか?本稿では、純粋にリスク管理の観点、つまりすべての種が系統的、または、標準作業手順書(SOP)といったものを基準に行動する傾向があるという点に絞り、この疑問を検討していきます。実は、皆様が考えるSOPとは異なるSOPが存在します。これについては追って説明いたしますので、このままお付き合いください。

エール大学教授のLaurie Santosは、他の種の話として、オマキザルが非合理な選択をすることを示しています。それは、たとえ論理的には誤りの場合でも、何かを得る際はリスクを避ける傾向にある一方、損失を伴う場合は、よりリスクを取った判断をするという点です。

ヒトも、選択肢を与えられた際に、類似の挙動を示します。例えば、コインを投げて表が出たら1000ドルもらえるチャンスがあるとします。裏が出たら何もなし、損失はありません。もう1つの選択肢は、もらえる金額は500ドルですが、確実にもらえるとします。大半の人は確実に500ドル手に入る方を選択します。今度は状況を変えて、コインを投げて表が出たら1000ドル失いますが、裏が出たら何も失わずに済みます。リスクをかけたくなければ500ドルを渡すだけ。この場合、ヒトはリスクをかける傾向にあります。ここに見られる思考回路としては、「何も失いたくない」であり、そのためチャンスにかけるのです。 

別の実験(Dr. Daniel Kahneman及びAmos Tverskyによる)では、問題の提起の仕方によって、ヒトが認識するリスクと意思決定に大きな影響が及ぼされることが認められています。選択肢として、ある治療に対し、600名の患者グループから200名の命を救うことができると表現した場合と、死亡例は600例中400例であると表現した場合では、前者では72%が治療を選択し、後者では22%でした。 

ライフサイエンス業界での選択

ここでもう一度、我々がどれだけスマートな種であるのか考えてみましょう。選択を誤ったり、良識を見落としてしまう原因には、何が存在するのでしょうか?この疑問を掘り下げていく前に、以下の事象について考えてみましょう。 

1. 1990年代後半、ある製薬会社が、患者がオピオイド系鎮痛剤の依存症に至るケースは少ないとし処方を促進したことから、医師や薬局による安易な処方が広がった。依存症を治療することがどれ程難しいかを知っている私たちが、なぜ「オピオイド危機」の到来を予測できなかったのでしょうか?

2. Johns Hopkinsの近年の研究では、脳卒中・アルツハイマー病・糖尿病を凌ぎ、医療ミスが現在アメリカで3番目の主要な死因であることが示唆されています。米医療研究・品質調査機構(Agency for Healthcare Research and Quality,AHRQ)によると、医療ミスには8つの共通する根本原因があります。この原因を考察した際に、8つのうちの7つはヒトに関連するものであることが判明したのです。エラー(異常)の検出及び予防に関して、ヒトがどれほど優れているのかということが、問題提起されます。

3. 1980年当時のアメリカでは、年間300万件にすぎなかったCTスキャンですが、現在は8000万件実施されています。更に、多くの低侵襲治療が、術中X線透視装置を使用して行われており、室内にいる患者ならびに医師の被曝率が高いことが明らかになっています。これによる人体への影響は、どうでしょうか?その質問の回答となる明白なデータは存在しませんし、その答えを見つけるために無作為化試験を行うことも不可能です。 その結果、患者と医師は、低用量が良いであろうというイメージの下でやりすごしているのです。安全上限値は、第2次世界大戦中は約25,000mRem、1950年当時で15,000、19575年当時では5,000となり、現在に至ります。この値は、十分な安全性を担保するものなのでしょうか?その明確な答えは誰もわからないのです。

後編ではリスクマネジメントの具体的な適用方法をご紹介いたしますので、お楽しみに!

References
1: http://www.cnn.com/2010/OPINION/07/16/ted.future.of.humanity/index.html
2: Tversky, Amos; Kahneman, Daniel (1981). "The Framing of decisions and the psychology of choice". Science. 211 (4481): 453–58. Bibcode:1981Sci...211..453T.doi:10.1126/science.7455683. PMID7455683.
3: https://alwaysculture.com/hcahps/communication-medications/8-most-common-causes-of-medical-errors/
4: https://www.health.harvard.edu/cancer/radiation-risk-from-medical-imaging
5: http://news.mit.edu/1994/safe-0105
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著者のご紹介
Ray Chowdhary


Rai Chowdharyは、MS、CQE、CQM、CQA、6-Sigmaブラックベルトの資格を有し、著者、ビジネスコーチ、また起業家として活躍中。 ライフサイエンス、航空宇宙科学、自動車、食品、化学プロセス業界において30年以上に渡る経験を積んできました。近年は、経営、品質、製造の監督を担当する経営幹部としてさまざまな役職を務め、その実績には、世界初で唯一の放射線遮蔽クリーム、スイスの親会社であるSulzer Innovation Awardを受賞したチタンとコバルトクロムの結合など、数多くの技術とデバイスの発明と実用化等さまざまです。
また、動物試験及び前臨床研究のデザイン及び実施、データ分析、及びポリマー・ セラミック複合骨空隙充填材のスケールアップ製造に関するコンサルティング業務に重点を置いています。 さらに、FDAと協働した製品の規制プロセス、QMSのセットアップ、医療機器のISO 13485及びCEマーク認証取得にも尽力。ソースから使用場所へのサプライチェーンのマッピング、効率の最適化、リスク要因の排除においても主導的役割を果たしています。 彼が率いるチームは、概念設計からパイロット、商業規模の製造まで、製品ローンチまでの牽引役でもありました。 GE、Phillips、Siemens等フォーチュン500(Fortune 500)の企業を主要クライアントとし新人研修に貢献したことも注目に値します。
Intermedics Orthopedics/Sulzermedica、Applied Materials、Dell、DuPont、BLOXR、Edwards Life Sciences、Reckitt Benckiser、Glaxo、 Amedica, Lam Research、Intuitive Surgical及びAbbott Spineは、彼が従事した企業の一部です。

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