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FDA査察における3つのポイント『準備、管理、フォローアップ』|ニュース&コラム|品質マネジメントシステム(QMS)管理ソフトウェアならマスターコントロール

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FDA査察における3つのポイント『準備、管理、フォローアップ』

2016-02-09

FDAの査察を無事に終えることは、cGMPへの順守及び事業の成功において極めて重大です。堅牢な品質システムを運用・維持することは、FDA査察を突破する上で欠かせないポイントの1つですが、それが全てではありません。査察に対する準備及びマネジメントも同様に重要です。適切なマネジネント戦略があれば、コンプライアンス違反に対する指摘を受けるリスクを軽減することもできます。ここでは、査察官に対する知識、実際の査察準備及び管理方法、査察の終了時に必要なフォローアップ、ならびに、実際の現場から得た教訓についてお話したいと思います。

査察官に対する知識
査察官の一番の懸念は患者の安全性であるため、その点に関しては十分な根拠とデータをもって説明する必要があります。労力のかかる作業ですが、決定意思を得るためには多くのデータを用意しておくことが重要となります。2011年のプロセスバリデーションガイダンス(Process Validation Guidance)及びICH Q9に従って、より科学的な裏付けが重要視され、査察官は科学的意義の追及によりオープンな姿勢を示すようになりました。ただし、査察官は決して悪意があるわけではなく、彼らはプロの懐疑論者であり、事業場においてあらゆる危険性や有害性の特定を含む全てのチェック項目が、データに基づいた強い根拠によって裏付けされ、それが支持されることを期待しています。

正しい決定が下されているとの結論に査察官が至るよう説得力のある方法でデータを提示することが、品質保証管理者及び内容領域専門家(SME, subject matter expert)の責務となります。査察官に対し反対の意見を述べることが可能である点にも注意することが重要です。もちろん、常に礼儀正しく接し、好戦的な態度は回避すべきです。基本的には、製造プロセスが十分に理解されていること、また品質管理システムがどうのように設計されているか、そしてこの2つがどのように連携してコンプライアントシステムを構築しているかについての説得が必要となります。

信頼を査察官に植え付けることが、良好な関係や流れを築くうえでの第一段階となります。そして信頼を植え付けるには、文書管理(GDP, good documentation practices )を一貫して遵守するドキュメント(データファイル)とともに情報パケットを事前に整えておくことしかないのです。GDPは、強力な品質システムの基礎となるものです。GDPを遵守することで、監査担当者はパケットに含まれるデータに信頼感を抱くものです。さらに、データパケットに明確なラベルをつけておくこと(バリデーション、サマリーレポート、変更管理、逸脱など)で、正確な情報が提供されているという好印象を与えます。それだけ、きれいに整理されたデータには価値があるというものです。

さらに、進行中の品質システムの改善策を示すことも、cGMPコンプライアンスの維持に取り組んでいることを印象付けることができるでしょう。品質システムの改善の例としては、定期的な品質マネジメントレビュー(QMR)、CAPAの記録や継続的改善プロジェクトを通じて示すことができるのではないでしょうか。
査察官は、限られた時間の中で査察を完了しなければなりません。査察官が無駄な時間を費やすことはかえって悪印象です。
最低限の時間で限りなく査察を進めやすいよう努めましょう。

査察準備
査察準備は、企業の財源に匹敵する価値があります。査察を受ける際の準備を事前に行っておくことで、安心して査察当日を迎えられることができるでしょう。最初に行うべきことは、「査察の管理」SOPの作成です。SOPには、FDAの施設訪問時の対応担当者を明記します。まず、施設の品質部門長、業務責任者及びその代理に通知します。ここで、査察官が施設を訪問する旨を、関係従業員全体に知らせる方法についても説明します。SOPに対するトレーニングは全従業員を対象に行い、トレーニング実施に関する記録を文書で残します。尚、受付係や警備員なども、査察官と最初に接することからトレーニングの対象と考えられます。SOPでは、以下のトピックを取り上げてください。

  • ・情報に対するFDAのリクエストした記録方法についての説明
  • ・査察官から写真やビデオの提示がリクエストされた場合の対処方法
    •   SOPで写真やビデオ撮影の禁止が規定されている場合でも、FDAの査察官には撮影の権利があります。
    •   Operations2014年のInvestigations Operations Manual(IOM;査察実施マニュアル)のセクション5.3参照
  • ・企業の品質管理手順に反するFDAリクエストへの対応方法についての説明
  • ・作業中のクリーンルームへの入場が制限されている場合などでも、査察官を案内する必要があること
  • ・就業時間に・関する記載。

査察準備チーム(IRT)発足の目的は、すべての準備活動を洗い出し、完了することです。査察時に査察のサポートをすることが、IRTの責務となります。品質関連組織以外のグループからもメンバーを集めたチーム(クロスファンクショナルチーム)を構成するとさらに良いでしょう。

十分な計画を立てることが重要であり、これにより査察の管理における労力が軽減します。
そのためには、どの会議室を査察官に割り当て、どの会議室を監査のサポートルーム(別名「War room(戦略的な決定をする部屋)」)として使用するかを事前に決定しておくことも重要です。これらの2つの部屋は近すぎてもいけません。War roomは使用中、特にSMEが査察官のリクエストに対する戦略を練っている場合には、雑踏と喧騒の渦中に置かれます。従って、査察官の控室として使用する会議室は、人の行き来の多いエリアから離れた場所が適しています。また、できれば製造現場やQC臨床検査にも近すぎない場所が望ましいです。            

計画過程の一部として、誰がSMEを務めるのか、また治験実験計画書や逸脱の提示に関する担当者は誰なのかをあらかじめ決定しておきます。SOP(標準作業手続き)、逸脱、トレンド報告やバリデーション(検証)の正当性を主張する練習の機会を設けることで、誰が査察官訪問時の対応に適しているかを判断する良い機会となります。さらに重要なこととして、模擬査察を実施することで、品質管理責任者が査察時対応すべきではない人物を認識できる機会でもあります。規制当局からの査察官への資料の提示には、ある意味スキルを要します。誰でも、このスキルがあるというわけではありません。人によっては神経質になり過ぎたり、問題について語り過ぎる場合があります。そのためSMEとのテストを実施することは、査察を無事完了する目的において重要な要素となるのです。

資料を提示する者が、資料の内容について知識と自信を持っていることだけでなく、建物の内部も外部も査察の準備が整っていることが大切です。
不動産用語の「curb appeal(外見上の魅力)」という言葉を思い浮かべてください。施設の屋外にメンテナンスが行き届いている様子が窺える場合、その中で行われている作業も同様に良好な状態であるということを裏付けてくれるものです。

施設の外見上の魅力と共通のコンセプトに、文書の系統化や視覚的表現があります。これは、cGMPの文書管理が実施され、遵守されているという良いイメージを査察官に植え付けるうえでとても重要です。プロトコール(治験実施計画書)及びレポートの系統化に、目次やビジネスプランの要点をまとめた事業計画書(エクゼクティブサマリ)を用いるのも良好な方法です。これらの文書は非常に厚い場合がありますが、査察官は限られた時間で多くの資料をチェックしなければならないため、サマリがよく検討され、まとまっている場合にはそれだけがレビューの対象となる場合があります。裏付け文書をすべて揃えたパッケージを準備しておくと、フォローアップの際に裏付け文書の提示を求められることを避けることができます。レポートで逸脱やCAPAといった文書が参照される場合、そのような記録のレビューも可能なように準備しておきます。査察における精密な調査に耐え得る補足文書パッケージの例を下記に示します。

  • ・サマリーレポート
  • ・署名済みのプロトコール
  • ・逸脱及び不一致に関する記録
  • ・裏付け付属書類 
  •  
  • 品質マネージャは、「注目すべきトピック」のリストを作成します。こうしたトピックとは、正当性を示すのがより困難なデータパッケージとなります。妥当性が確固たるものではなくなってしまった逸脱や、バリデーションプロトコール(科学的根拠のある治験実施計画書)/レポートにさまざまな逸脱があるといった状況は、どんなcGMP組織においてもある、といっても過言ではありません。査察時のリスク低減の鍵となるのは、より難しい会話を想定し、決定意思を示しその正当性を示す戦略を練っておくことです。模擬査察の際にこの演習を行って、データと結論について明確な話ができるよう経験しておくのが良いでしょう。

これを瞬時にこなすことは非常に難しいことですが、演習により、よりスムーズにこなせるようになります。

実際の査察の管理
まず、査察官に証明書の提示を要求し、実施される査察内容を確認します。施設の品質部門長、業務責任者及びその代役に、査察官の訪問を直ちに通知します。

監査開始会議(オープニングミーティング)では、実施される査察の種類に関する情報を得ることが重要です。原因を追求するための追加査察(for-cause inspection)ではルーティンに実施されるサーベイランス査察とはアプローチが異なるため、どのタイプの査察が実施されるのかを把握することが重要となります。証明書が提示されたら、所定の会議室に査察官を案内します。査察が進行中である旨を施設全体に通知します。査察準備チームは、所定の待機室準備計画を自動的に実行します。プリンタ、コンピュータ、電話、査察リクエストログ、幹事役及び書記が、査察のサポートには必要となります。

最初のプレゼンテーションを行うことも可能ですが、簡単に済ませます。組織図、人数、就業時間と施設のレイアウト図を見せ、施設見学にも案内します。通常1日目までにここまでを行います。清掃が見学に先立ってきちんと実施されていることを確認してください。開いているダンボール箱や通常のゴミやほこりを取り除いておくことで、清掃手順についての質問は回避できるでしょう。見学の前に、査察官に施設案内図のコピーを渡しておきます。人と設備の流れについて明確に示しておきます。
見学の際に、査察官は設備の番号と人員の名前に注目します。見学が完了すると、この情報をもとにメンテナンス、較正及びトレーニングの記録がリクエストされます。資料提示に関するリクエストはすべて記録し、監査サポートルームに伝えます。査察官にはリクエストされた資料の送付に関し現実的なタイムフレーム(物事を行うための必要な時間)を伝えてください。

監査フォローアップ
資料の提示を繰り返し求めなくてはならないような場合には、査察官も気分の良いものではありません。非常に合理的な所要時間の提示が想定される為、各リクエストの内容をきちんと理解していることを確認してください。質問または資料提示に関するリクエストの内容についての不明点は、査察官に遠慮なく質問してみてください。査察テクニックの1つとして、どんな情報が提供されるかを確認するために、故意に漠然とさせることがあります。質問には常に誠実に回答してください。誤った説示または不正行為は、意図的かにかかわらず、確実に悪影響を及ぼすものです。明るみになった場合の査察官の反応を考慮してみてください。

一日一日終了時に、その日のオブザベーション(指摘)についての簡単な報告を査察官に求めてみてください。また、この時間から翌日の査察の方向性を知ることができます。それによってスタッフは就業時間後に翌日必要となる資料を準備することができます。文書が準備され、いつでも提示できる状態にあることで、査察はよりスムーズになります。

査察官の技術
査察中、追加情報を得るため査察官が用いるテクニックがいくつかにあります。1つには先に述べた、意図的な曖昧さを用いるテクニックがあります。この場合、リクエストの内容を明確化するための質問をし、正確に理解できているか確認します。
もう一つの査察テクニックは、長時間にわたる沈黙です。人は、沈黙を埋めるために発言が増える傾向があります。質問への回答が終了したら、次の質問が尋ねられるまで、安心して静かに座っていて大丈夫です。査察官が妥当性を審理するためにデータまたは結論についての質問が尋ねられる可能性がある点に注意することが重要です。この一連の質問は、そのままアプローチに対する異論を意味するものでも、裏付けデータに基づいてなされた決定事項を擁護するものでもありません。
短時間にかなりの情報量がリクエストされるという事態も起こりうるのです。このテクニックの目的は、資料がどれくらい簡単に検索可能かについて確認することであり、実際にすべての文書業務をチェックすることではありません。合理的な所用時間も提示します。

監査のフォローアップ
品質管理責任者の目的は、査察からのオブザベーション(指摘)をゼロにすることです。そして、もしオブザベーションが発見された場合には、指摘事項(finding)すべてに回答することです。コミットメントはすべて徹底的に検討し、タイムリーに実施可能かを確認します。規制当局に提出されたコミットメントに対する逸脱は、タイムリーにその正当性を示し、伝達する必要があります。計画に変更がつきものであることは規制当局側も理解していますので、必ず計画を伝達するようにしましょう。

最後に
有効な査察の準備計画を策定し、実行することは、より良好な結果を導くとともに、査察における労力も軽減します。事前に計画することによって、文書の提出期間を短縮することができ、SMEのプレゼンテーションスキルも向上し、査察官が抱く品質システムに対する信頼感も増します。
 

著者のご紹介
Kelly Thomasは、医薬、生物工学及び医療機器業界に18年の経験を有し、cGMP事業に影響を及ぼすすべての品質保証活動及び品質管理活動の策定、実行、管理を専門領域としています。コンプライアンスストラテジー(法令遵守計画)が企業の戦略的ミッション、顧客満足度及び規制要求事項と整合する品質システムの開発及び実施もその一部に含まれます。
Thomas氏は、East Carolina Universityで生物学を専攻し修士号を取得、その後Meredith CollegeのMBAを取得しています。またAmerican Society for Quality (ASQ-米国品質協会)から複数の認定資格も取得しています。

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