MENU

AI(人工知能):SaMD向け法規制の枠組み【前編】|ニュース&コラム|品質マネジメントシステム(QMS)管理ソフトウェアならマスターコントロール

ニュース

MASTERCONTROL NEWS

コラム

AI(人工知能):SaMD向け法規制の枠組み【前編】

2021-05-12

※本稿は2部構成の前編です。後編をご覧になりたい方は、こちらをクリックしてください。

下記の製品の共通点について、考えてみましょう。

  • 脊椎画像の読影をサポートする骨量計算支援ソフトウェア(VCAR)(GE Medical Systems社)
  • マンモグラフィによる乳房密度検出のためのAIソフトウェア「ProFound」(iCAD社)
  • 神経放射線学的MRI画像の自動ラベリングと測定を行うBrainInsight(Hyperfine Research社)


これらの製品は、AI(人工知能)と機械学習が採用されていて、510(k)またはDeNovo(デノボ)を用いてFDA(米国食品医薬品局)の認可を取得し、市場に展開されている医療機器です。そして、最も重要なのは、提案段階ではありますが、AI及び機械学習を搭載したプログラム医療機器(SaMD:Software as a Medical Device)のように、市販後にソフトウェアに対して変更が発生する製品を管理する法規制の枠組みが発行されていない時点で、認可されているという点です。AI及び機械学習を搭載した医療機器で認可を取得できている製品は既に60を超えており(Medical Futurist誌)*¹、さらに多くの医療機器が追加されることが想定されています。

AI(人工知能)や機械学習の利点

デジタルヘルスケアへの展開が医療業界では着実に進んでおり、この影響で取り扱うデータ量も膨大になってきていますが、AIや機械学習は、そのデータを斬新な方法で活用し、ヘルスケアのあり方を変革する可能性を秘めており、下記はその一例です。

  • 医療従事者がデータの入力や整理に費やしている時間を患者さんとの時間に使うことで、医療コストの削減が期待できます。Google Brainの創設者であり、スタンフォード大学コンピューター・サイエンス学科にて非常勤講師を務めるAndrew Ng氏は、一般的な人が1秒以内に考え作業している業務は、近い将来、AIを使用し、自動化を実現できるだろうと述べています。*²
  • 診断支援ソフトウェアを使用することで、医療の質を高めることができます。例えば、様々なモダリティーからの画像を補強することで、自動的に診断や治療のサポートに繋げることができます。
  • 臨床試験の募集から実施、管理を強化します。
  • 創薬プロセスを強化します。


一般的に、複数のデバイスやサービス間における優れた連携機能や仮想アシスタント機能など、AIや機械学習を搭載した個人向け製品の利用を通じて、このような技術の様々なメリットは認識されています。現在、企業や医療機関は、AIや機械学習を活用して自社の製品やサービスを改善できる方法を見つけ始めています。AIや機械学習が進化を遂げることで、新たな製品の開発や、より短時間で新製品の市場展開を可能にするツールやサポートが誕生し、更なる改善と事業の成長に繋がることができます。

AIや機械学習に対する考察

現在はまだ発展途中であり、今後も医療を変革し続ける技術である点を踏まえると、当面の目標であり重要な点は、AIや機械学習を安全で効果的に医療機器に対して取り入れることであり、それを促進する規制の枠組みを作ることです。そして、規制当局や規格を作成する担当者は、既存の医療機器に使用されているアルゴリズムと比較し、AIや機械学習に使用されるアルゴリズムに関する幾つかの重要な点について、検討を重ねています。

1つの重要なポイントは、従来のアルゴリズムは決定論的な手法に基づいている点であり、物理や化学をベースとした計算や固定された値や判断基準が使用されています。しかし、AIや機械学習では、データに連動したロジックが採用されており、収集したデータからアルゴリズムが「学習」することで、決定論的な手法が苦手とする複雑な情報にも対応できるという明確な強みがあります。また、生体としての人間のデータは膨大で、様々な複雑性も持っている為、そのような手法はSaMDにとっても実用的ではありません。

例えば、従来の決定論的なアルゴリズムを搭載したインラインの血液センサーは、測定された血流量や不透明度に基づいて、血液の純度を示すことが可能で、この手法でも、明確な検出及び再現性を備えています。そして、AI及び機械学習を備えた機器になると、測定したデータ(血流量や純度等)及び結果(測定領域中の血液の量など)の表示に加え、測定したデータと基準値との比較からデータを「学習」することができます。

このような単純な比較でも、決定論的なアプローチとデータ連動型には違いがあり、幾つかの疑問点が浮かんできます。

検証:学習に使用されているデータの品質はどうか?試験実施環境における機械学習の精度は?(アルゴリズムが動作するように設計された動作条件の範囲)

バリデーション:学習された動作は、想定されるユーザーの動作環境を完全にカバーしているか?

説明性:表示する結果をユーザーはどのように理解できるか?操作性のリスクに疑念を抱くような結果に導く可能性はないか?

バイアス:AI及び人工知能の精度に影響するようなバイアスが含まれるデータがアルゴリズムとの教育に使用されていないか?例えば、想定される動作環境を反映しない、特定の人種や性別に基づいていないか?

適応性:対象外となるデータが分析に含まれてしまっている場合に発生するリスクは?

計画:実際のデータに基づいて継続的に学習し、アルゴリズムを継続的に更新する仕組みは想定されているか?規制の観点で、このような更新が利用目的や利用者を変更しないか?また、既知のリスクの変更や新たなリスクを発生させないか?

このように様々な点を考慮すると、規制当局によるガイダンスが必要なことは明らかです。後編では、SaMD向けのAIの歴史やFDAが提案したフレームワークの現況、そして、今後の展望についてご紹介いたします。


参照

  1. The state of artificial intelligence-based FDA-approved medical devices and algorithms: an online database,” Benjamens, S., Dhunnoo, P. & Meskó, B. npj Digit. Med. 3, 118 (2020).
  2. What Artificial Intelligence Can and Can’t Do Right Now,” Andrew Ng, Harvard Business Review, November 9, 2016.
     

著者のご紹介
Cameron Loper

ヘルス&ライフサイエンス業界を中心に、シニアプロジェクトリーダーやシステムエンジニア、テクノロジーアナリストとして活躍しています。キャリアの中で、様々な医療機器の設計や開発の管理、コンサルティングを行ってきました。専門は、センサーやソフトウェア、複雑なアルゴリズム、電気機械部品、ロボット工学で構成されるシステムの開発です。現在は、MPR Associatesのデジタル・ヘルス・リーダーとして、MPRのAI/ML機能を最大限に活用するために、業界に働きかける役割を担っています。

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

一覧へもどる

 Ⓒ Copyright 2000-2017 MasterControl K.K.
ALL RIGHTS RESERVED.

ページのトップへ