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AI(人工知能):SaMD向け法規制の枠組み【後編】|ニュース&コラム|品質マネジメントシステム(QMS)管理ソフトウェアならマスターコントロール

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AI(人工知能):SaMD向け法規制の枠組み【後編】

2021-05-19

※本稿は2部構成の後編です。前編をご覧いただくには、こちらをクリックしてください。

本連載の前編では、AI(人工知能)や機械学習の利点を考察し、その取り扱いについての当局の検討内容をお話をしました。後編では、過去から現在までの規制を振り返り、FDA(米国食品医薬品局)が検討している最新の法規制の枠組みについて、ご紹介いたします。


法規制の過去と現在

医療機器向けAIや機械学習の導入に関するガイダンスは、現時点では不足していますが、この課題の解決にFDAも取り組んでおり、現在、医療機器としてのソフトウェア(SaMD)の安全性や有効性を網羅し、導入についても現実的である法規制の枠組みの作成を行っています。

2019年4月、FDAは、「Proposed Regulatory Framework for Modifications to Artificial Intelligence/Machine Learning (AI/ML)-Based Software as a Medical Device (SaMD) - Discussion Paper and Request for Feedback(AIや機械学習を用いた医療機器としてのソフトウェア(SaMD)に対する法規制の枠組みの提案)」というディスカッションペーパーにて、規制の枠組みに関する内容を発表しました。*¹

また、同年に先進医療機器学会(AAMI:ssociation for the Advancement of Medical Instrumentation)や英国規格協会(BSI:British Standards Institution)が、医療機器に対して機械学習を適用する際に検討すべき重要事項をポジションペーパーを通じて発表しました。本文献では、AIや機械学習が実現する自律性や、新規または既存とは異なるデータに応じて、対応を調整することが可能な継続的学習システムの影響、そして、説明責任や結果に対する理解度等を中心に説明が記載されています。また、他の段階とも連携し、AIや機械学習に関する用語や分類を標準化する為の取り組みについても提案されており、このような標準化をAIや機械学習に対して行うことで、既存の規格と新しい規格との整合性及び関係性を構築することを目指しています。*²

2020年2月には、AIで自動化された放射線画像処理ソフトウェア及び画像取得装置に関するフィードバックを得る為、FDAは公開ワークショップを開催しました。*³

そして、同月、予定変更統制計画を用いて申請されたAIを搭載したソフトウェアに対して、De Novoプロセスを通じて、販売承認を発表しました。*⁴

また、2020年9月、FDAは、高品質なデジタルヘルス技術を患者に届けることを目的とした「デジタルヘルスセンターオブエクセレンス」をCDRH(Center for Devices and Radiological Health)内に設立しました。*⁵

そして、最近では2021年1月に、FDAがAI及び機械学習をベースとした医療機器としてのソフトウェア(SaMD)に対するアクションプランを発表し、次のような内容が含まれています。*⁶

  • 所定の変更管理計画に関するガイダンス案の発行
  • 他の規制機関やコミュニティと協力し、調和のとれた機械学習の実施方法を策定
  • AI及び機械学習を搭載したデバイスの透明性(例:ラベリング)を確保し、患者様を中心としたアプローチをサポート
  • バイアスの防止や一貫性の向上など、AI及び機械学習のアルゴリズムの改善をメーカーに奨励
  • 実運用におけるパフォーマンスに関するパイロット研究の推進



FDAが提案するAI及び人工知能に対するプロダクトライフサイクルの包括的な枠組み

FDAが提案するSaMDの枠組みでは、管理環境下において、AIや機械学習を適用し続けることができることを目指しています。

2019年のポジションペーパーに記載の通り、適用可能なAIや機械学習とは、次のような状況において、使用できることが期待されています。

  • 特定の環境における性能の最適化(例:特定地域の患者を対象とする)
  • デバイスがどのように使用されているかに基づいてパフォーマンスを最適化(例:特定の医師の希望に基づく)
  • より多くのデータを収集し、性能を向上
  • 機器の使用目的の変更


そして、その適用プロセスは、新しいデータから「学習」する段階と、新しいアルゴリズムを展開して「更新」する段階から構成されます。

また、FDAは、AI及び機械学習を搭載したSaMDに対する最初の市販前審査において、変更管理計画(Predetermined Change Control Plan)の提出を企業に提案しており、その内容は、次のような構成となっています。

  • SaMD Pre-Specifications(SPS):機器に対して想定または予定されている変更点を記載
  • Algorithm Change Protocol (ACP):変更によるリスクを管理するために企業が取るべき方法を具体的に説明


このアプローチは、製品のライフサイクルを通じて機器の品質を維持することを目的としたGMLP(Good Machine Learning Practice)の必要性を重視しています。また、この枠組みでは、実運用におけるデータの収集と、そのデータとFDA間における透明性の維持を目指しており、その内容については、FDAのアクションプランの中にも記載されています。

ここで重要な点が、機器以外のソフトウェア機能は規制対象外であり、現在、提案されている枠組みの対象からも外れているという点です。具体的には、(1)医療施設自体の管理サポート、(2)健康的なライフスタイルの維持・促進、(3)患者の電子記録としての機能、(4)データの転送や保存、フォーマット変換及び表示、(5)治療方針の決定に関わる一部の機能は、医療機器とは分類されず、FDA規制の対象外となります。

この点は、ハードウェアとしての医療機器ではなく、医療目的で使用されるソフトウェアを規制するというFDAのSaMDに対するアプローチと一致しています。しかし、AI及び機械学習を搭載した医療機器の多くは、放射線治療や心臓病治療のように、何らかの形でハードウェアを必要とする可能性がある為、潜在的なギャップは存在しています。その為、データを取得するためのハードウェアとしての医療機器とは分けて、AI及び人工知能の部分をSaMDとして分類することができます。また、ハードウェアとソフトウェアが1つの医療機器として構成されている場合もありますが、変更管理計画の策定など、本ガイダンスの本質的な要素を適用することで、機器に搭載されたAI及び機械学習の目的や適用内容を明確にすることができます。


今後について

FDAは、2021年中にAI及び機械学習を搭載したSaMDに対するガイダンスの追加を目指しています。その間にも、AI及び機械学習を搭載した多くの新しい医療機器が引き続き承認されており、企業も変更管理計画といったFDAの枠組みに導入予定の要素を提出書類等に取り入れていることから、このような内容が次のガイダンスの重要な要素になることが予想されています。

参照

  1. FDA Outlines Proposed Framework for Regulating Artificial Intelligence Software,” FDA.
  2. Digital health standards,” BSI.
  3. Public Workshop – Evolving Role of Artificial Intelligence in Radiological Imaging,” U.S. Food and Drug Administration, February 25-26, 2020.
  4. FDA Authorizes Marketing of First Cardiac Ultrasound Software That Uses Artificial Intelligence to Guide User,” U.S. Food and Drug Administration, February 7, 2020.
  5. FDA Launches the Digital Health Center of Excellence,” U.S. Food and Drug Administration, September 22, 2020.
  6. Artificial Intelligence/Machine Learning (AI/ML)-Based Software as a Medical Device (SaMD) Action Plan,” U.S. Food and Drug Administration, January 2021
     

著者のご紹介
Cameron Loper

ヘルス&ライフサイエンス業界を中心に、シニアプロジェクトリーダーやシステムエンジニア、テクノロジーアナリストとして活躍しています。キャリアの中で、様々な医療機器の設計や開発の管理、コンサルティングを行ってきました。専門は、センサーやソフトウェア、複雑なアルゴリズム、電気機械部品、ロボット工学で構成されるシステムの開発です。現在は、MPR Associatesのデジタル・ヘルス・リーダーとして、MPRのAI/ML機能を最大限に活用するために、業界に働きかける役割を担っています。

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

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