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EUのQP(クオリファイドパーソン)とは?|ニュース&コラム|品質マネジメントシステム(QMS)管理ソフトウェアならマスターコントロール

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EUのQP(クオリファイドパーソン)とは?

2021-08-04

ライフサイエンス業界の規制は、製品が安全に使用され、意図した目的に沿って有効であることを保証する為に策定されています。その中で、GMP(Good Manufacturing Practice)またはcGMP(Current Good Manufacturing)と呼ばれるガイドラインは、医薬品や医療機器、食品、化粧品の製造業者が、安全な環境にて厳格な手順に従って製品を安定して製造することで、汚染や製造工程におけるミスを削減することを目的とした規制と位置付けられています。*¹

cGMPはFDA(米国食品医薬品局)によって制定及び維持されており、欧州のGMPはEMA(欧州医薬品庁)が管理しています。各当局のガイドラインへ対応する為に必要な品質に関わる業務プロセスは、比較的似通っていますが、一方で大きな違いがある箇所もあります。その違いの一つとして、EU圏では、出荷の許可や品質に関わる大半の業務プロセス及びタスクの責任者として、QP(クオリファイドパーソン)の存在が求められているという点があります。

例えば、米国を拠点として活動している企業が自社またはパートナー企業を通じてEUに医薬品を輸出する場合、QPの役割を認識しておく必要があり、また、査察への準備として、EUの他のGMP要件についても把握しておく必要があります。


QPの義務と責任

欧州司令2001/83/ECはQPの責任について定義しており、第51条にて、「… QPは、認証が行われる加盟国にて施行されている法律に準拠し、各バッチがMA(製造承認)の要件やGMP(Good Manufacturing Practice)に基づいて製造され、確認したことを保証する責任がある」と記載されています。

完成した各バッチは、EU圏内での販売または供給、あるいは輸出の為に、出荷されるまでにEU圏内のQPによって承認される必要があります。また、その認証は、MAに記載されている製造者及び(または)輸入した業者のQPのみが実施することが可能です。

GMPに関するEUガイドラインのAnnex 16では、QPの通常の業務の詳細が記載されており、例えば、職務の一部として、次の内容を保証することが求められています。

  • GMPに従って製造が行われていること。QPは、追加となる文書も確認し、品質に関わるレビューに参加する場合があります。
  • 製造及び試験の業務プロセスを検証すること。逸脱や調査、変更管理、CAPA等を含む全ての文書にQPがアクセスできること。
  • 逸脱や製造プロセス、品質管理に対する変更は、適切な責任者によって承認されていること。
  • 必要となる全ての試験及び確認が実施され、製造及び品質に関わる文書が整備・承認されていること。
  • 必須となる監査は全て実施されていること


QPは、バッチの品質に関わる他の要素も考慮する必要があります。ただし、バッチの承認及び出荷を除き、品質管理を含む業務を外部に委託することは可能ですが、GMPに従って品質に関わる全ての業務が完了していることをQPが保証する必要はある為、特定の業務をどの程度委託するかは、QPが判断する必要があります。また、委託した場合、その業務の実施や法規制対応を継続的に保証する必要もあります。

現在は、製品の様々な製造工程が外部の委託先によって実施されていることも少なくなく、下記は、サプライヤー管理に関係するガイドラインの主要な要件です。

  • スポンサー企業のQPは、各サプライヤーの認定に関する取扱いを記載した契約書が必要である。
  • バッチの確認及び承認に関わっているサプライヤーのQPは、その責任・責務の詳細に関して知識を有していなければならない。
  • 関係しているサイトの数に関わらず、最終製品に対する承認を行う担当者は、GMP対象となる全ての品質に関わる工程が完了していることを確認しなければならない。
  • 原薬及び医薬品に関係するサプライチェーンの活動に関して、最後の承認に至るまで、関係している全ての文書が存在していなくてはいけない。また、QPは全ての文書にアクセスできる必要がある。


全てのサプライヤーがGMPに準拠できている場合、最終製品を承認するQPは、各企業のQPが確認した内容を活用することが可能です。その結果、適切なサプライヤー向けのQMS(品質マネジメントシステム)が採用できている企業では、求めている品質を満たす原料のみ納品・保証される枠組みが出来ていることに繋がります。*²


QP申請

QP申請は、EUまたは各国における申請手続きを通じて認可された医薬品の新規販売承認や変更、更新の手続きを行う際に、MAH(医薬品販売承認取得者)が提出する必要があります。このQP申請により、有効成分がGMPに準拠し製造されていることを確認する為、QPは、原薬(API)のサプライチェーンを十分に理解し、原薬の各バッチが承認されたサプライチェーンを通じて調達できていることを証明する必要があります。また、申請者は、この手続きの確認を効率的に推進する為、提供されている様式を使用することが推奨されています。*³

EMAが提供しているQP申請の様式は、原薬の製造及びサプライチェーンがGMPに準拠していること、また、製造業者及びQPがサプライチェーンに関して適切に理解し、その品質を保証する上での基本と位置付けられています。*⁴

2013年、EC(欧州委員会)は、EU圏外で製造された治験薬(IMP)に関する新しいQP申請様式を発表し、下記の内容が含まれました。*⁵

  • 第三者が異なる地域で治験薬を製造した場合、QPが、治験薬がEU GMPに準拠していることを確認する記録となる。
  • サプライヤーのQPは、実地監査または第三者が実施した監査によってGMPへの適合性の証明が可能である。
  • サプライヤーが監査を受け入れない場合、この工程を省略しても問題ないことの証明を書面にて提出する必要がある。この内容には、対象企業がEU GMPまたは同等の規制・規格に準拠できていることを保証するQPの説明も含まれる。


出荷判定に関するQPの権限

QPは、バッチを承認するまでに、製造販売許可に関わる要求事項に準拠できていることを確認する必要があります。バッチの製造や試験にて逸脱が確認された場合でも、出荷を許可する権限を有していますが、その場合、EU GMPのAnnex 16にある要求事項を参考に対応する必要があります。

製造段階において想定外の問題が発生したバッチは、リスク分析を行った結果、安全性または有効性への影響がないと判断できる場合、出荷を許可することができます。ここで注意すべき点は、事象が繰り返し発生している場合、その事象は想定外として分類すべきではないという点です。*⁶その場合、是正措置の実施や出荷を許可する上で更なる評価を実施する必要があります。もし、発生している問題が製造販売許可で求められている内容に関係してしまっている場合、QPには選択肢がほとんど残っていません。


QPが直面する共通の課題

EUは27の加盟国で構成されており、40以上もの所管官庁が存在しています。EUにおける役割に関する条約(旧ローマ条約)によると、「指令は、達成すべき目標に対して、各加盟国を拘束するが、その形式と方法については、各国の当局に委ねるものとする。」となっています。*⁷

基本的には、EU指令は、各国の国内法に導入されるものではありますが、各企業での対応方法については、ある程度の自由があることを意味しています。その為、QPの役割については、各国の当局においても異なる解釈や矛盾、許容範囲の違いが生じている可能性があります。全ての企業には独自の文化があるように、QPも様々な特徴や知識、技能を有する方がいるのも当然のことです。その為、QPについても、それぞれ異なる解釈を持っている可能性があります。


QPについて他に知っておくべきこと

QPの解釈は企業によって異なる要素がある一方、企業を問わず、共通となる要素も幾つか存在します。例えば、QPは、原材料を承認する前にそのバッチ固有のデータを確認する必要があり、また、そのバッチに関する全てのデータにQPはアクセスできる必要があります。また、その企業の品質システムやプロセスに関して、包括的な知識を有していることも重要です。

まとめ

欧州にて医療製品を取り扱っている企業の品質システムにおいて、キーパーソンと位置付けられるQPは、幅広い責任を負い、多くの問題の対処を行なっており、例えば、バッチやその中間体に対する承認はQPのみ実施可能です。また、バッチに対する承認や出荷に関する規制に準拠する為、企業が適切な品質システムを有していることを確認することもQPに求められています。

医療製品の有効期間における効能・効果や安全性、品質、有効性に関する最終的な責任は、MAHにあります。しかし、QPには個々のバッチがMA及びGMPに準拠して製造されていることを確認する責任があります。

また、QPは、規制の継続的な変更や医療製品のイノベーションの発展に直面し続けている為、規制対象となる多くの企業では、品質に関わる全ての業務プロセスの統合及び合理化、また、品質管理の全ての要素に漏れのない運用を実現する為、電子的なQMS(品質マネジメントシステム)を導入しています。

参照

  1. What Is Good Manufacturing Practice?”, Hannah Simmons, News Medical, Feb. 26, 2019.
  2. EU Guidelines for Good Manufacturing Practice for Medicinal Products for Human and Veterinary Use,” Annex 16: Certification by a Qualified Person and Batch Release, European Commission, Oct. 12, 2015.
  3. Guidance for the Template for the Qualified Person’s Declaration Concerning GMP Compliance of Active Substance Manufacture ‘The QP Declaration Template,’” European Medicines Agency, May 21, 2014.
  4. Code of Practice for Qualified Persons,” European Industrial Pharmacists Group, October 2004.
  5. New EU Template for QP Declaration (IMPs),” ECA Academy, Feb. 14, 2013.
  6. Supra note 2.
  7. Consolidated Version of the Treaty on the Functioning of the European Union,” UK Legislation (page).
     

著者のご紹介
Wolfgang Schmitt

Wolfgang Schmitt氏は、ドイツのハイデルベルグ大学と英国ロンドンのスクールオブファーマシーで薬学を学び、ドイツのカイザースラウテルン大学では総合的品質管理の学位を取得しました。

コミュニティファーマシーでの勤務を経て、1999年にドイツ・ルートヴィッヒスハーフェンにある旧クノール社(後のアボット社)のGMPコーディネーション(R&D)に従事、その後、SOLIQS(アボット社のグローバルドラッグデリバリー事業部)の品質管理責任者も歴任しました。

2005年から2006年には、アボット社のグローバル製薬研究開発品質保証部門のアソシエイトディレクターとして、GMP/GLPコンプライアンスを担当。2006年7月には、プロジェクト・マネージャーとしてコンセプト・ハイデルベルク社に入社し、現在はオペレーション・ディレクターを務めています。電子メールによるお問い合わせは、w.schmitt@concept-heidelberg.deまでご連絡ください。

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